「日々の売上データはExcelにあるが、眺めているだけで活用できていない」
「顧客リストはあるものの、DMを送るだけで手一杯だ」
「DXと言われても、何から手をつければいいか分からない」
多くの経営者や管理職の方が、手元にある「宝の山(=データ)」をどう活かせばいいか、その一歩目で立ち止まってしまっています。
この記事では、データ活用の初心者である中小企業の管理職やバックオフィス担当者の皆様に向けて、高価なツールやAIを導入する「前」に、まず取り組むべきシンプルなデータ分析手法を3つ、具体的に解説します。
この記事を読み終える頃には、「データ分析って、Excelでもできるんだ」「これなら自社でもすぐに試せる」と、データ活用へのハードルが下がり、DXへの具体的な第一歩を踏み出せるようになっているはずです。
なぜ今、中小企業こそ「データ活用」が必要なのか?
「データ活用やDXは、体力のある大企業がやることだ」 そう思われている経営者の方も少なくありません。
中小企業こそ、データ活用の恩恵を大きく受けられると考えます。
「勘・コツ・度胸」経営からの脱却
従来の日本の中小企業は、経営者やベテラン社員の「勘・コツ・度胸(KKD)」によって支えられてきました。もちろん、その経験則は非常に貴重な資産です。
しかし、市場の変化が激しい現代において、KKDだけに頼った経営はリスクを伴います。
- 「なぜ今月は売上が良かったのか?」
- 「どの商品が、どの客層に響いているのか?」
- 「離れていってしまった優良顧客はいないか?」
こうした問いに、経験則ではなく「数字(データ)」で客観的に答えられるようになること。それがデータ活用の第一歩です。
AI導入の「土台」作り
日々お客様と接する中で、「AIで何かすごいことをしたい」というご相談をよく受けます。
しかし、AIがその能力を発揮するためには、「質の高い、整理されたデータ」が不可欠です。AIは、データという「食材」がなければ、最高の料理(分析結果)を作ることはできません。
将来的にAIを活用して業務を自動化したり、売上予測をしたりするためにも、まずは手元のデータを「使える状態」にしておくことが、DXの土台作りとして最も重要なのです。
データ活用初心者が陥る「3つの罠」
「よし、データ活用を始めよう!」と意気込んだものの、うまくいかないケースには共通点があります。
特に初心者が陥りやすい「罠」を3つご紹介します。
罠1:いきなり「高価なツール」を導入しようとする
「データ分析」と聞くと、高性能な「BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール」や、AIシステムを導入しなければならないと考えがちです。
しかし、目的が曖昧なままツールを導入しても、絶対に使いこなせません。
まずは、すでにお持ちのExcelで十分です。Excelには、初心者がデータを分析するために必要な機能(並べ替え、フィルタ、ピボットテーブル)がすべて揃っています。大切なのはツールではなく、「データから何を知りたいか」という目的意識です。
罠2:「完璧なデータ」を最初から集めようとする
「分析するなら、全店舗、全期間、全商品のデータを完璧に集めないと…」と、データ収集の段階で挫折してしまうケースも多いです。
データ活用は「小さく始めて、大きく育てる」のが鉄則です。
まずは「先月1ヶ月分の売上データ」や「A商品の顧客リスト」だけでも構いません。不完全でも、まずは手元にあるデータで試してみることが重要です。
罠3:「分析のための分析」になってしまう
データ分析に慣れてくると、グラフを作ったり、いろいろな角度で集計したりすること自体が楽しくなってしまうことがあります。
しかし、データ分析は「きれいなレポート」を作ることが目的ではありません。
「どの顧客層にアプローチを強化するか?」「どの商品の在庫を減らすか?」といった、「次の行動(アクション)」に繋げることこそが、ビジネスにおけるデータ活用のゴールです。
まずはExcelでOK!初心者向け「3つのDX分析手法」
では、具体的にどのような分析から手をつければよいのでしょうか。 ここでは、Excelですぐに実践できる、最も基本的かつ強力な3つの分析手法をご紹介します。
1. ABC分析(重点分析)
最もシンプルで、即効性のある分析手法です。 商品や顧客を、売上高や利益への「貢献度」が高い順にランク付けし、A・B・Cの3グループに分けて管理します。
- Aランク:売上全体の70%〜80%を占める、最重要グループ(例:全商品のうち上位20%)
- Bランク:売上全体の15%〜25%を占める、中堅グループ
- Cランク:売上全体の5%程度しか占めない、下位グループ
【画像:ABC分析のシンプルなパレート図(売上の累積構成比を示すグラフ)】
【どうやるの?】
Excelで、商品別(または顧客別)の売上データを降順(多い順)に並べ替えます。 全体の売上に対して、各商品が何%を占めているか(構成比)を計算し、上位から累積していきます。累積構成比が80%までをA、95%までをB、それ以外をC、といった形で分類します。
【得られる気づきとアクション】
- Aランク(売れ筋):絶対に欠品させない。在庫管理を徹底し、関連商品のクロスセルを提案する。
- Cランク(死に筋):在庫を抱えすぎていないか? 思い切って取り扱いを終了する、またはセット販売で消化する。
「すべての商品を平等に管理する」のではなく、Aランクにリソース(人員、在庫、広告費)を集中投下するという、メリハリのある戦略が立てられます。
2. RFM分析(顧客分析)
主に「顧客データ活用」で使われる手法で、顧客の「質」を見極めるのに役立ちます。 以下の3つの指標で顧客をランク付けします。
- R (Recency):最終購入日(最近買ってくれたか?)
- F (Frequency):購入頻度(よく買ってくれるか?)
- M (Monetary):累計購入金額(たくさんお金を使ってくれたか?)
【どうやるの?】
顧客リストから、上記3つのデータを抽出します。 それぞれの指標で顧客を3〜5段階でランク付け(例:Rが1ヶ月以内なら「A」、半年以上なら「C」)し、組み合わせます。
【得られる気づきとアクション】
- 「A・A・A」顧客(優良顧客):最も大切にすべきお客様。特別なイベントに招待する、感謝のDMを送るなど、手厚くフォローする。
- 「C・A・A」顧客(離反予備軍):以前は頻繁に高額購入してくれていたが、最近ご無沙汰。クーポンや新商品の案内を送り、再訪を促す。
- 「A・C・C」顧客(新規顧客):最近買ってくれたが、まだ1回だけ。リピーターになってもらうため、次の購入を促すフォローメールを送る。
このように、顧客の「状態」に合わせて、きめ細やかなアプローチを変えることができます。
3. クロス集計(掛け合わせ分析)
最も手軽で、最も多くの「気づき」を与えてくれる分析手法かもしれません。 2つ(または3つ)のデータを掛け合わせて集計することで、単独のデータでは見えなかった傾向を発見します。
Excelの「ピボットテーブル」機能を使えば、ドラッグ&ドロップで誰でも簡単に作成できます。
【どうやるの?】
例えば、売上データを「商品カテゴリ(縦軸)」と「顧客の年代(横軸)」で掛け合わせます。
【得られる気づきとアクション】
- 例1:「商品カテゴリ × 年代」
- 発見:「健康食品Aは、60代以上の売上が突出しているが、30代〜40代には全く売れていない」
- アクション:60代向け媒体への広告出稿を強化する。30代向けには別の(健康志向の)商品を開発する。
- 例2:「曜日 × 時間帯」
- 発見:「飲食店の売上は、金曜日の19時〜21時と、土曜日の12時〜14時に集中している」
- アクション:その時間帯の人員を手厚くする。逆に、空いている平日の火曜・水曜ランチ限定で割引セットを提供する。
このように、仮説を立ててデータを掛け合わせることで、具体的な打ち手が見えてきます。
AI導入の前に。データ分析の「質」を高める最重要ステップ
ここまで3つの分析手法を紹介しましたが、いざ実行しようとすると、多くの方が「ある壁」にぶつかります。
それは、「データの『お片付け』」です。
「ゴミ」からは「ゴミ」しか生まれない
システム開発の世界には 「GIGO (Garbage In, Garbage Out)」という言葉があります。 「ゴミ(質の低いデータ)をインプットすれば、ゴミ(役に立たない分析結果)しかアウトプットされない」という意味です。
例えば、顧客データを分析しようとした時、
(株)ManPlus有限会社ManPlusManPlus(全角)
これらは人間が見れば「すべて同じ会社」だと分かりますが、コンピュータやExcelは「別々の会社」として集計してしまいます。 また、「林 建吾」と「林 建吾」(スペースが全角か半角か)も区別されます。
こうした「データの表記ゆれ(名寄せ)」や、「入力漏れ」「重複」を地道にクレンジング(掃除)する作業。これこそが、データ活用の9割を占めるとも言われる、最も地味で、最も重要な作業です。
DXとは「データを片付ける」習慣化
ABC分析やRFM分析を行う前に、まずはこの「データのお片付け」に取り組む必要があります。
- 入力ルール(例:社名は必ず登記簿上の正式名称で統一する)を決める。
- 過去のデータを、そのルールに従って修正する。
- 新しいデータは、必ずルール通りに入力するよう徹底する。
この地道な作業こそが、DXの本質的な第一歩です。 そして、この「地道な単純作業」こそ、将来的にRPAやAIが得意とする分野でもあります。
弊社が開発している「AI-OCR(請求書や領収書の自動読み取り)」アプリも、まさにこの「手入力という面倒な作業を自動化し、データをクリーンな状態で蓄積する」ための一つのソリューションです。
まずは手作業で「お片付け」を体験し、データの重要性を理解すること。そして、その作業が定型化してきたら、ツールやAIを使って自動化を検討する。この順番を決して間違えてはいけません。
まとめ:小さな一歩が、未来のDXにつながる
今回は、データ活用初心者がまず取り組むべき、Excelでもできるシンプルな分析手法をご紹介しました。
- データ活用は中小企業にこそ必要。 KKD経営から脱却し、AI時代の土台を作るために不可欠です。
- 罠に注意。 高価なツールは不要。完璧を目指さず、Excelで「今あるデータ」から「アクション」に繋げることを意識してください。
- まずは3つの手法から。
- ABC分析:商品や顧客の「優先順位」をつける。
- RFM分析:顧客の「状態」に合わせてアプローチを変える。
- クロス集計:データを掛け合わせ、新しい「傾向」を発見する。
- 最も重要なのは「データのお片付け」。 表記ゆれや重複をなくす地道な作業(データクレンジング)こそが、分析の質を決めます。
難しく考える必要はありません。 まずは来週の会議で、「先月の売上データをABC分析してみました」と、1枚のグラフを共有することから始めてみませんか?
その小さな一歩が、あなたの会社のDXを推進する、大きな原動力となるはずです。
DXの第一歩、ManPlusがお手伝いします
この記事でご紹介した分析手法は、どれもシンプルですが、いざ自社でやろうとすると、
「そもそも、分析に使えるデータがどこにあるか分からない」
「Excelのピボットテーブルの使い方がよく分からない」
「『データのお片付け』が面倒すぎて、手が回らない」 「分析を自動化・仕組み化したい」
といった、次なる壁に直面することも多いかと存じます。
私たち有限会社ManPlusは、単にAIアプリを開発するだけではありません。豊富なコンサルティング経験を活かし、「お客様がデータ活用を自走できる」ようになるまでの仕組みづくりをご支援することを得意としています。
- 御社の業務をヒアリングし、どのデータをどう「お片付け」すべきか整理する。
- ExcelやKintone(キントーン)などを活用し、データをクリーンに蓄積するワークフローを構築する。
- 請求書や領収書の処理など、定型的なデータ入力作業をAI-OCRアプリで自動化する。
- 蓄積されたデータを分析し、経営判断に活かすためのAIコンサルティングを提供する。
もし、「データ活用の第一歩が踏み出せない」「地道なデータ整理をAIで効率化したい」とお考えでしたら、ぜひ一度、お気軽に有限会社ManPlusへご相談ください。
御社の状況に合わせた、最適なDXの進め方をご提案いたします。
