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まずはExcelから?ITが苦手な経営者でも始められる「身近なDX」アイデア集

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DX

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と聞くと、多額のIT投資や専門的な知識が必要だと感じ、尻込みしてしまっていませんか?

実は、DXの第一歩は、多くの企業で既に導入されている“Excel”からでも踏み出すことができます。

本記事では、「Excelから始める小さなDX」をテーマに、ITが苦手な経営者の方でも今日から取り組める具体的なアイデアと実践手順を、実際のコンサルティング現場の体験談を交えながら詳しく解説します。

なぜ今、「Excel を活用したDX」が注目されるのか?

「本格的なDXはまだ先の話」と考えている中小企業は少なくありません。しかし、現場では静かな悲鳴が上がっています。

  • DXの現状: 中小企業庁の調査によると、実に66.2%の中小企業が「初歩レベルのデジタル活用」にとどまり、本格的な業務改革まで踏み出せていないのが実情です。 *出典: 中小企業庁『2024年版 中小企業白書』
  • Excel依存の限界: 一方で、現場ではExcelへの依存に限界を感じている企業が約7割にものぼります。しかし、具体的な「脱Excel」を検討しているのはそのうち半数以下という調査結果もあり、多くの企業が「不便だが、今さら変えられない」というジレンマを抱えています。 *出典: 株式会社KUIX『Excel利用実態調査』
  • データの分散という課題: さらに、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)の最新調査では、32.8%の企業が依然としてExcelなどのファイルでデータを管理しており、情報が各部署・担当者に分散してしまう「データのサイロ化」が大きな経営課題となっています。 *出典: JDMC『データマネジメント実態調査』

これらのデータが示すのは、多くの企業が「最も身近な業務データベース」であるExcelを使いこなせておらず、非効率な手作業に多くの時間を奪われているという現実です。

だからこそ、「Excelの能力を最大限に引き出すこと」が、最も現実的で効果的なDXの第一歩となるのです。

Excelから始めるDXの3つのメリット

  1. 圧倒的な手軽さ: 追加の改修コストはゼロ。ほとんどの社員が基本的な操作に慣れているため、学習コストが極めて低いのが特徴です。
  2. 成功体験の積みやすさ: 小さな自動化でも「時間が短縮された」「ミスがなくなった」という成果が目に見えやすく、社員のモチベーション向上につながります。
  3. 未来への布石: Excelでデータ整理・活用の基礎を固めることは、将来的なAIやRPA(ロボットによる業務自動化)導入に向けた最高のトレーニングになります。

ITが苦手でもすぐ試せる!身近なDXアイデア5選

「理屈は分かったが、具体的に何をすればいいのか?」という方のために、今日から試せる5つのアイデアをご紹介します。

1. Excelマクロ+Power Queryで“手作業コピペ”を撲滅する

毎月の売上報告や請求書作成のために、複数のExcelファイルからデータをコピー&ペーストしていませんか? その作業、Excelが自動でやってくれます。

  • 概要: マクロで定型作業の操作を記録・自動化し、Power Queryという機能でデータの抽出・変換・統合(ETL)を行います。関数が苦手な方でも、マウス操作中心の画面(GUI)で直感的にデータを整理できます。
  • 実践例: 複数の拠点から送られてくる売上報告Excelを、一つのマスターファイルに自動で集約する。
  • 導入効果: ある企業では、毎月12時間かかっていた帳票作成作業を、わずか3.5時間に短縮(約70%削減)することに成功しました。

2. Excel+Power Automate Desktopでファイル整理を“ロボ化”する

毎日受信するメールに添付された請求書や注文書を、手作業でフォルダに振り分けていませんか? その作業、Windowsに標準搭載されている無料ツールが代行します。

  • 概要: 「Power Automate Desktop (PAD)」は、パソコン上の操作を自動化するRPAツールです。無料版でも「メールを受信したら」「特定のファイルが作成されたら」といったトリガーで、ファイル名の変更やフォルダ移動を自動実行できます。
  • 実践例: 取引先から届いたメールの添付ファイル(PDF)を、自動で「取引先名_日付」という名前に変更し、指定のフォルダに保存する。
  • 導入効果: まずは1日10分の単純作業から置き換えるだけで、ヒューマンエラーを防ぎ、より重要な業務に集中できます。

3. Teamsのタブに共有Excelを置くだけで、タスクを見える化

高機能なプロジェクト管理ツールを導入したものの、複雑で使いこなせずに形骸化していませんか?

  • 概要: Microsoft Teamsのチャネルに、共有設定したExcelファイルを「タブ」として固定するだけ。これだけで、簡易的ながら強力なタスク管理・進捗共有ツールになります。
  • 実践例: 案件ごとのタスクリストをExcelで作成し、Teamsのタブに設置。担当者はチャットで議論しながら、ワンクリックで台帳にアクセスし、ステータスを更新できます。
  • 導入効果: チャットと管理台帳を行き来する手間が省け、報告のためだけの会議も削減。「あの件どうなった?」という確認コストが劇的に下がります。

4. 「請求書らくらく読取」+Excelで、面倒なデータ入力をゼロに

紙やPDFで届く請求書の情報を、会計システムに入力する作業にうんざりしていませんか?

  • 概要: AI OCR(光学的文字認識)機能を活用し、請求書の画像データから文字情報を自動で読み取り、CSV形式で出力します。
  • 実践例: 「請求書らくらく読取」のようなAI OCRサービスで請求書をスキャンし、出力されたCSVをExcelのPower Queryに読み込ませる。これにより、会計システムと連携できる形式にデータを自動で整形します。
  • 導入効果: あるクライアント先では、この仕組みを導入した直後から、月30枚ほどの請求書入力作業がほぼ全自動化されました。

5. No-Codeツールへの“卒Excel”で、管理体制を強化する

「複数人での同時編集が難しい」「誰がいつ更新したか分からない」…Excelでのデータ管理に限界を感じ始めたら、次のステップに進むサインです。

  • 概要: KintoneやAirtableといった「No-Code(ノーコード)」ツールは、プログラミング知識なしで業務アプリケーションを構築できるサービスです。最初はExcelのテーブルをそのままインポートすることから始められます。
  • 実践例: Excelで管理していた顧客リストをKintoneにインポート。担当者ごとのアクセス権限設定や、変更履歴の自動記録といった、Excelでは難しかった要件を簡単に実現します。
  • 導入効果: スモールスタートが可能で、将来的にAPI連携を通じてAIやRPAと繋ぎこむことで、さらに高度な業務自動化へと発展させやすいのが魅力です。

【現場体験談】Excelだけで月30時間の業務を削減した士業事務所の事例

ここで、Excel活用で大きな成果を上げた法律事務所の事例をご紹介します。

  • 背景 (Before):
    • 弁護士5名が在籍する法律事務所。
    • 案件管理を10種類以上のExcelファイルで個別に行っており、情報共有が非効率で、事務スタッフはデータの転記作業に追われていました。
    • 所長は「ITは苦手」と感じており、大規模なシステム投資には消極的でした。
  • 施策 (Action):
    • 案件台帳の自動集約: OneDrive上で共有設定したExcelブックをマスターとし、各弁護士が入力した情報をPower Queryで一つの案件台帳に自動で集約する仕組みを構築しました。
    • 請求書の自動生成: 案件台帳の情報をもとに、マクロを使ってボタン一つで請求書をPDF形式で一括出力できるようにしました。
    • 進捗状況の可視化: Power BI(Microsoftの無料BIツール)を使い、案件の進捗状況や担当者別の業務量をグラフで可視化。経営判断の材料としました。
  • 結果 (After):
    • 月30時間に及んでいた転記・集計作業をほぼゼロに削減。
    • 単純作業から解放された結果、担当弁護士が顧客対応にかけられる時間が20%増加し、サービスの質が向上。
    • データ活用の成功体験を通じて、3カ月後にはAIチャットボットの導入へとスムーズに発展。デジタル化への抵抗感が払拭されました。

“小さなDX”を成功に導く7つのステップ

思いつきでツールを導入しても、失敗に終わる可能性が高いです。以下の7ステップに沿って、着実に進めましょう。

  1. 【目的の定義】: まず「何のためにやるのか」を1行で定義します。(例:月次集計作業にかかる時間を半減させ、月末の残業をゼロにする)
  2. 【現状の可視化】: 日常業務のどこに手作業が発生しているかを洗い出し、それぞれにどれくらいの時間がかかっているか、時間コストを見える化します。
  3. 【最小の自動化】: まずはExcel上でできる最小の自動化から着手します。例えば、古いVLOOKUP関数を、より高機能なXLOOKUP関数に置き換えるだけでも立派な一歩です。
  4. 【成果の共有】: 「この改善で月○時間削減できた」という具体的な成果を数値で示し、社内の合意を形成します。これが次の改善への推進力になります。
  5. 【業務の拡張】: Power AutomateやRPAを使い、Excelの周辺業務(ファイル整理、メール送信など)へと自動化の範囲を広げます。
  6. 【No-Codeへの移行】: Excelだけでは管理が難しくなったり、他システムとのデータ連携が必要になったりしたら、KintoneなどのNo-Codeツールへの移行を検討します。
  7. 【本格DXへの挑戦】: これまでの成功体験と蓄積されたデータを土台に、AIによる需要予測、RPAと外部データベースの連携といった、より高度なDXへとスケールさせていきます。

よくある質問とつまずきポイント

Excelの活用でつまずきがちなポイントと、その解決ヒントをまとめました。

質問・お悩みつまずきがちな理由解決ヒント
共有したExcelファイルがすぐ壊れる複数人が同時に編集することによる数式の競合や上書きミス。SharePoint上にファイルを保存し、Excelの「バージョン履歴」機能を活用しましょう。誰がいつ、どこを変更したか追跡でき、簡単に元に戻せます。
作ったマクロが他の人のPCで動かない64bit/32bit版Officeの混在や、セキュリティ設定の違い。社内のOfficeバージョンを統一するのが理想です。また、マクロに「デジタル署名」を付与することで、セキュリティ警告を回避しやすくなります。
RPA(Power Automate)が途中で止まる画面のレイアウト変更やウィンドウ名の変化など、UI(見た目)の変動に弱い。「ボタンをクリック」のようなUI要素の操作だけでなく、ファイルの存在をトリガーにしたり、API経由でデータを操作したりと、より安定した方法での自動化を検討しましょう。

まとめ:今日から価値ある一歩を踏み出すために

この記事で繰り返しお伝えしてきたように、ExcelはDXの入り口であり、最高の練習場です。

  • 学習コストほぼゼロで、日々の業務に潜む無駄を自動化できます。
  • Excelによる“小さなDX”の成功体験は、AIやRPAといった本格導入への最高の加速剤となります。
  • ご紹介した7つのステップに沿って目的を明確にし、身の丈に合ったツール拡張を心がけることが成功の鍵です。

他社の成功事例は、あくまで参考です。大切なのは、自社の課題に目を向け、まずは一つの業務からでも着手してみること。

この記事を読んで「自社でも試してみよう」と感じていただけたなら、まずはご自身のExcel業務の中から「毎日5分かかっている作業」を探し、それを自動化・時短することから始めてみてください。 その小さな成功が、会社の未来を変える大きなDXへの、確かな第一歩となるはずです。

「自社の業務に最適なDXの進め方が分からない」 「AI OCRやRPA連携まで、専門家と一緒に進めたい」

このようなお悩みをお持ちでしたら、AI導入から業務改善までワンストップで支援するManPlusのAIコンサルティングにご相談ください。貴社の状況を丁寧にヒアリングし、最も効果的な“身近なDX”のロードマップをご提案します。

「もっと効率的に業務を片付けたい」と感じたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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