皆様は一度はChatGPTなどの生成AIに触れたことがあるのではないでしょうか。そして、こんな経験はありませんか?
「AIに質問を投げても、的外れな答えが返ってくる…」
「鳴り物入りで導入したのに、いまいち業務に活かせない…」
「結局、AIって”使える”の?それとも”使えない”の?」
もし一つでも心当たりがあれば、この記事はあなたのためのものです。実は、AIの性能を最大限に引き出すには、ある「コツ」が必要です。それが、今回テーマとなる「プロンプト」です。
この記事を読み終える頃には、あなたはAIとの対話の質を劇的に向上させ、日々の業務効率化や企画立案にAIを自在に活用するための、具体的かつ実践的な方法を手にしていることをお約束します。
なぜ今、「プロンプト」がビジネスパーソンにとって必須スキルなのか?
2025年現在、AIはもはや一部の技術者のためのツールではありません。あらゆるビジネスシーンに浸透し、私たちの働き方を根本から変えようとしています。
私はAIを「非常に優秀で、膨大な知識を持つ素直な新入社員」のようなものだと考えています。ポテンシャルは計り知れませんが、その能力をどれだけ引き出せるかは、私たち「指示を出す側」のスキルにかかっています。
この「指示」こそが、プロンプトです。
かつて、PCの登場によってタイピングが必須スキルになったように、AI時代においては、質の高いプロンプトを作成する能力、すなわち「プロンプトエンジニアリング」の素養が、ビジネスパーソンにとっての新たな必須スキルになりつつあります。このスキルの有無が、個人の生産性、ひいては企業の競争力に直結する時代は、もう目前まで迫っているのです。
今さら聞けない「プロンプト」の基本の「キ」
では、改めて「プロンプト」とは何なのでしょうか。その本質を理解することが、上達への第一歩です。
プロンプトとは何か? – AIへの「魔法の呪文」ではない
多くの方が、プロンプトを単なる「AIへの質問」だと捉えがちです。しかし、それはプロンプトの一側面に過ぎません。
より正確に言うと、プロンプトとは「AIに対して、望む出力を得るために与える指示・命令・文脈のすべてを内包したテキスト」のことです。
「〇〇について教えて」という質問だけでなく、 「あなたはプロの編集者です」という役割設定。 「以下の文章を小学生にも分かるように要約してください」という制約条件。 「出力は箇条書きでお願いします」というフォーマット指定。
これらすべてが、プロンプトを構成する重要な要素なのです。魔法の呪文を一言唱えれば万事解決するわけではなく、AIという対話相手に、こちらの意図を正確に伝えるためのコミュニケーション術と捉えるのが良いでしょう。
プロンプトが機能する仕組み(比喩で解説)
AI(特に大規模言語モデル)の頭の中を、**「とてつもなく巨大な図書館」**だと想像してみてください。そこには、古今東西のあらゆる書籍や情報が収められています。
あなたは、その図書館にいる**「超優秀だが、指示待ちの司書」**に仕事をお願いします。この司書がAIです。
【画像:プロンプトの役割を図解】 (人 → プロンプト(依頼書) → AI(司書) → 回答(探してきた本や情報))
もしあなたが司書に「面白い本を探して」とだけ頼んだら、司書は困ってしまいますよね。「面白い」の基準は人それぞれですし、どんなジャンルを求めているのかも分かりません。結果、司書は適当に選んだ本をいくつか持ってくるしかありません。これが、「的外れな答え」が返ってくる原因です。
一方で、「あなたは歴史小説の専門家として、16世紀のヨーロッパを舞台にした、政治的な駆け引きが面白い小説を3冊、あらすじ付きで提案してください」と具体的に頼んだらどうでしょう。司書はあなたの意図を正確に理解し、求めていた本、あるいはそれに近い本を持ってきてくれるはずです。
この「司書への具体的な依頼書」こそが、プロンプトの本質なのです。
あなたの指示はなぜ伝わらない?ありがちな「ダメなプロンプト」3つのパターン
良いプロンプトを学ぶ前に、まずは多くの方が陥りがちな「伝わらないプロンプト」のパターンを知っておきましょう。これは、私がアクセンチュアでシステム開発の要件定義をしていた頃や、RPAソリューションズで業務自動化のコンサルをしていた頃に目の当たりにした、「プロジェクトが失敗する典型的なコミュニケーションエラー」と非常によく似ています。
パターン1:指示が曖昧・抽象的すぎる
- ダメな例:
「新商品のプロモーション案を考えて」
これは先ほどの「面白い本を探して」と同じです。AIは何を基準に考えればいいか分かりません。
- どんな商品なのか?
- ターゲットは誰か?
- 予算はどれくらいか?
- 目的は認知度向上か、売上増加か?
こうした情報がなければ、当たり障りのない、誰でも思いつくようなアイデアしか出てきません。
パターン2:前提条件や文脈(コンテキスト)が欠けている
- ダメな例:
「この議事録を要約して」
一見、具体的な指示に見えます。しかし、これではAIの性能を半分も引き出せません。
- 誰が読むための要約なのか?(経営層向け?現場担当者向け?)
- 要約の目的は?(全体像の把握?決定事項の確認?ToDoリストの作成?)
- 文字数はどの程度に収めるべきか?
これらの**文脈(コンテキスト)**を与えることで、要約の質は劇的に変わります。
パターン3:AIの役割(ロール)を定義していない
- ダメな例:
「このキャッチコピーについてどう思う?」
AIは「どう思う?」と聞かれても、一般的な事実や多様な視点を並べることしかできません。あなたが求めているのは、もっと専門的な視点からのフィードバックのはずです。
AIに特定の役割(ロール)を与えることで、出力の視角をコントロールできます。
AIの性能を120%引き出す!良いプロンプトに共通する「3つの共通点」
お待たせしました。ここからが本題です。私が数多くのAI活用プロジェクトや自社でのアプリ開発を通じて確信している、「良いプロンプト」に共通する3つのポイントをご紹介します。これさえ押さえれば、あなたのAIとの対話は劇的に変わります。
共通点1:具体的で明確な「指示(Instruction)」
ダメなプロンプトの逆で、とにかく具体的に、誰が読んでも同じ解釈になるレベルで明確に指示を出すことが最も重要です。
ビジネスシーンでよく使われる「5W1H」を意識すると、指示が格段にクリアになります。
- What(何を): 成果物の具体的な内容(例:ブログ記事、メール文面、Pythonコード)
- Why(なぜ): その成果物が必要な背景や目的(例:若手社員の教育のため、見込み客へのアプローチのため)
- Who(誰が/誰に): 誰が実行し、誰に届けるのか(例:マーケティング部の新人が、30代の女性顧客に向けて)
- When(いつ): 状況や時間軸(例:来週のプレゼンで使う、本日15時までに)
- Where(どこで): 使用される媒体や場所(例:会社の公式ブログで公開、社内Slackで共有)
- How(どのように): トーン&マナー、出力形式、文字数などのスタイル(例:親しみやすい口調で、800字程度、マークダウン形式で)
これらを箇条書きやステップ形式で整理してAIに伝えるだけで、アウトプットの精度は驚くほど向上します。
共通点2:リッチな「文脈(Context)」
指示が「何をすべきか」を伝えるものだとしたら、文脈は「なぜそれをすべきか」の背景を豊かにするものです。AIに良質な文脈を与えることで、AIはあなたの意図をより深く理解し、期待以上の提案をしてくれるようになります。
あるクライアント企業の「営業日報のデータ整理」をAIで支援した際の体験談です。
当初、担当者の方はAIに「この日報データを整理して」
とだけ指示していました。しかし、出力されるのは単に項目がソートされただけの、あまり価値のないデータでした。
そこでプロンプトに以下の文脈を加えました。
「あなたは、この会社の営業部長です。月末の営業会議で、『各営業担当者の強みと弱みを分析し、来月のアクションプランを立てる』ことを目的に、添付の日報データを分析・整理してください。特に『受注に繋がりやすい商談パターン』と『失注が多い原因』の2つの観点から、インサイトを抽出してください。」
結果は劇的でした。AIは単なるデータ整理だけでなく、「Aさんは初回訪問でのヒアリングが得意だが、クロージングに課題がある」「B業界向けの提案は成功率が高い」といった、目的に沿った深い分析結果を出力してきたのです。これが、文脈の力です。
共通点3:適切な「役割(Role)」設定
AIに特定の専門家としての役割を与える「ロールプレイング」は、非常識に強力なテクニックです。これにより、AIは膨大な知識の中から、その役割に最もふさわしい思考パターン、専門用語、視点を選択して回答を生成します。
【役割設定の具体例】
- 「あなたは、経験豊富な人事コンサルタントです。」
- 「あなたは、ミシュランで三つ星を獲得したレストランのシェフです。」
- 「あなたは、世界的な投資家であるウォーレン・バフェットです。」
- 「あなたは、私の思考を整理してくれる優秀な壁打ち相手です。」
このように役割を最初に定義することで、AIの思考の”モード”が切り替わり、出力の質と専門性が格段に向上します。ぜひ、あなたの業務に合わせて様々な「役割」を試してみてください。
【実践編】明日から使えるプロンプトテンプレート
理論が分かったところで、次はいよいよ実践です。ここでは、私が普段から使っている基本的なプロンプトのテンプレートと、ビジネスシーンで役立つ具体例をご紹介します。
基本のテンプレート構造
この構造をベースに、各項目を埋めていくだけで、質の高いプロンプトが誰でも簡単に作成できます。
# 命令書
(ここにAIにやってほしいことの全体像を明確に書く)
# 制約条件
(文字数、トーン&マナー、出力形式、禁止事項など、守ってほしいルールを書く)
# 入力文
(AIに処理してほしい文章やデータなどを貼り付ける)
# 出力文
(ここから下に出力してください、という合制約条件)
ビジネスシーン別・プロンプト具体例
例1:丁寧なビジネスメールの作成
# 命令書
あなたは、ビジネスマナーを完璧にマスターした優秀な秘書です。
以下の会議の日程調整依頼メールのドラフトを作成してください。
# 制約条件
・相手は取引先の山田部長です。
・丁寧かつ簡潔な文章を心がけてください。
・候補日時は3つ提示してください。
・出力形式は、そのままコピーして使えるメール形式でお願いします。
# 入力文
・会議名:新サービス「AI-CONCIERGE」の導入に関するお打ち合わせ
・こちらの出席者:林(私)、佐藤
・所要時間:1時間
・候補日時:
1. 6月24日(月) 13:00-16:00
2. 6月25日(火) 終日可能
3. 6月27日(木) 10:00-12:00
# 出力文
例2:議事録の要約とタスク洗い出し
# 命令書
あなたは、外資系コンサルティングファームの優秀なコンサルタントです。
以下の議事録を読み、決定事項、懸案事項、および担当者別のTODOリストを抽出・要約してください。
# 制約条件
・目的は、会議に参加していないメンバーが5分で内容を把握できるようにすることです。
・専門用語は避け、平易な言葉で説明してください。
・出力は以下のマークダウン形式でお願いします。
## 1. 決定事項
## 2. 懸案事項(要確認事項)
## 3. TODOリスト
- [ ] @担当者名:タスク内容(期限:YYYY/MM/DD)
# 入力文
(ここに議事録のテキストを貼り付ける)
# 出力文
これらのテンプレートは、私が実際にコンサルティングの現場でお客様に提案し、「これだけでAIの反応が全然違う!」と効果を実感していただいたものです。ぜひ、コピーしてご自身の業務に応用してみてください。
プロンプトエンジニアリングの先にある未来 – AIとの「協業」
ここまで、プロンプトの基本的な考え方とテクニックをお伝えしてきました。しかし、覚えておいてほしいのは、プロンプトは一度入力して終わり、ではないということです。
優れたプロンプトとは、むしろ優れた「対話」の始まりです。
AIからの最初の回答が100点満点であることは稀です。その回答を元に、「この部分をもっと詳しく」「別の視点から考えて」「フォーマットを変えて」といった追加のプロンプトを投げかけ、対話を重ねることで、アウトプットの質はどんどん高まっていきます。これはまさに、優秀な部下や同僚との「壁打ち」と同じプロセスです。
弊社のAIアプリ開発では、最終的にはユーザーがこうした高度なプロンプトを意識しなくても、システム側がユーザーの意図を汲み取り、裏側で最適なプロンプトを自動生成するような仕組みづくりを目指しています。これは、RPAで業務プロセスを設計し、人間とロボットの最適な協業モデルを構築する考え方にも通じるものです。
例えば、私が個人的に可能性を感じているのが、AIによる「片付け」や「情報整理」への応用です。散らかった部屋や、フォルダ内で混沌としている大量のデジタルデータ。これらを前に、どこから手をつけていいか分からず途方に暮れた経験は誰にでもあるでしょう。
これは、ビジネスにおける情報管理も全く同じです。「あのデータどこだっけ?」「この資料、誰が何のために作ったんだっけ?」といった無駄な時間は、多くの企業で発生しています。
ここにAIを導入し、例えば「社内の全ドキュメントを、来期の事業計画立案に使えるように整理して」という大まかな指示を出すだけで、AIが最適な分類、タグ付け、要約を行ってくれる。まるで、散らかった情報という名の部屋を、AIという優秀な執事が最適なプロンプト(指示体系)に基づいて片付けてくれるような世界です。弊社では、まさにこうした「AI執事」のようなソリューション開発にも力を入れています。
まとめ:AIは魔法の杖ではない。しかし、最高のパートナーになり得る
本日は、2025年最新版として「プロンプト」の基本を徹底解説しました。 最後に、この記事の最も重要なポイントを振り返りましょう。
- 良いプロンプトの3つの共通点
- 具体的で明確な「指示」:5W1Hを意識する
- リッチな「文脈」:背景や目的を伝え、AIの理解を深める
- 適切な「役割」設定:AIに専門家として振る舞わせる
- プロンプトの本質は「対話」:一度で完璧を目指さず、AIとの壁打ちで精度を高めていく
AIは、私たちの命令をただ待つだけの機械ではありません。プロンプトという共通言語を通じて対話することで、私たちの思考を拡張し、創造性を刺激し、面倒な作業から解放してくれる、最高の「協業パートナー」となり得る存在です。
今日学んだことを、まずは一つでも試してみてください。「メールの下書きを頼んでみる」「議事録を要約させてみる」といった小さな成功体験が、あなたのAIに対する見方を大きく変えるはずです。
有限会社ManPlusからのお知らせ
「プロンプトの基本は理解できたけれど、自社の複雑な業務にどう応用すればいいか分からない」 「属人化しているベテランのノウハウを、AIでどうにか標準化・仕組化できないだろうか」 「AIに渡すべきデータが、そもそも社内で整理されていない…」
もし、あなたがこのような、より具体的で専門的な課題をお持ちであれば、ぜひ一度、私たち有限会社ManPlusにご相談ください。
私たちは単にAIツールを導入するだけでなく、元アクセンチュアのコンサルタントとしての課題分析力と、CTOとしての技術的知見を掛け合わせ、あなたの会社の業務に最適化されたAI活用の仕組みづくりをゼロからご支援します。
- AIコンサルティング:現状の業務をヒアリングし、AI導入による費用対効果の試算から、具体的な活用プランの策定までを伴走支援します。
- AIアプリ開発:市販のツールでは実現できない、御社独自の業務に特化したAIアプリケーションや業務自動化システムを開発します。
まずはあなたのお悩みや、AIで実現したい「夢」をお聞かせいただくことから始めませんか?下記より、お気軽にお問い合わせください。