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経営トップが押さえておくべきセキュリティ基礎:システムに詳しくなくても会社を守る5つの対策

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セキュリティ

「ITやシステムがよくわからないけど、セキュリティ対策は本当に大丈夫なのか…」と不安を感じている経営者の方へ。本記事では、専門知識がなくても会社の情報資産を守るための具体的な5つの対策を解説します。これらを押さえておくだけで、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを大幅に減らし、DXやAI導入を安全に進められるようになります。

はじめに:なぜ今、経営者がセキュリティを理解すべきなのか

私は長年、ITコンサルティングに携わり、現在は有限会社ManPlusの代表として、様々な企業のAI導入やDX推進のお手伝いをしています。そこで痛感するのが、「セキュリティ対策の重要性」です。

ある中堅製造業のケースではDX推進に積極的でしたが、基本的なセキュリティ対策が不十分だったために、取引先情報が流出。結果として数千万円の損害と、何より信頼回復に2年以上を要することになりました。

「ITの専門家ではないから…」と対策を先送りにしていませんか?

実は、セキュリティ対策の約8割は、専門的なIT知識がなくても実施できるものです。経営判断として適切な方針を示し、基本的な対策を講じるだけで、会社を守ることができます。

世界的なDX推進の流れの中、情報処理推進機構(IPA)の調査によると、中小企業におけるインシデント経験率は以下のように推移しています。

  • 2020年度: 約18%(推定)
  • 2021年度: 約20%(推定)
  • 2022年度: 約21%(推定)
  • 2023-2024年度: 23.3%

それでは早速、経営者が押さえておくべき5つのセキュリティ対策を解説していきます。

1. セキュリティ方針の明確化と全社共有

なぜ方針が重要なのか

セキュリティ対策の第一歩は、「何を守るのか」「どこまで守るのか」を明確にすることです。多くの経営者は「うちには守るべき情報はない」と考えがちですが、実際には以下のような重要な情報資産があります:

  • 顧客情報(個人情報保護法の対象)
  • 取引先との契約情報
  • 社内の機密情報(製品開発情報、人事情報など)
  • 業務ノウハウや知的財産

実践:基本的なセキュリティ方針の作り方

私がある企業のCTOに就いていたとき、次のようなシンプルな方針を全社に共有したところ、セキュリティ意識が大きく向上しました。

  1. 情報を3段階に分類する:「公開可」「社内限定」「厳秘」
  2. 各分類ごとの取扱いルールを決める:保管場所、アクセス権限、持ち出し制限など
  3. 責任者を明確にする:最終的には経営者、実務は担当部署長

重要なのは、難しく考えすぎないことです。A4用紙1枚に収まる程度のシンプルな方針でも、全社で共有・徹底できれば十分な効果があります。

方針策定のポイント

  • 自社の業種・規模に合わせてカスタマイズする
  • 全社員が理解できる平易な言葉で記述する
  • 定期的(半年〜1年ごと)に見直しを行う

2. 従業員教育とセキュリティ文化の構築

セキュリティ対策で最も弱い部分は、実は「人」です。どれだけ高度なセキュリティシステムを導入しても、使う人が適切に運用しなければ意味がありません。

従業員教育の効果的なアプローチ

ある小売チェーンでは、以下のような取り組みで、インシデント発生率を1年で約60%削減できたといいます。

  • 定期的な15分セミナー:月1回、朝礼時間を利用した短時間セミナー
  • 実例を用いた学習:他社の事例や自社のヒヤリハット事例を共有
  • ロールプレイング:不審メールへの対応や情報漏洩時の初動対応を実践

セキュリティ文化を根付かせるコツ

  • トップ自らが率先して対策を実践する
  • 良い取り組みを表彰・共有する仕組みを作る
  • 定期的なフィードバックを収集し、改善を続ける

「うちの会社はセキュリティに気を配っている会社だ」という誇りを従業員が持てるような文化を作ることが、最も効果的な対策となります。

3. アクセス管理と認証の強化

「誰が、どの情報に、どこまでアクセスできるか」を適切に管理することは、セキュリティ対策の基本中の基本です。

最低限実施すべきアクセス管理

  • 最小権限の原則:業務に必要最小限の権限のみを付与
  • 定期的な権限見直し:異動・退職時の権限削除を徹底
  • 特権アカウントの厳格管理:システム管理者権限は最小限の人数に

パスワード管理の新常識

実は、定期的なパスワード変更を強制することは、現在のセキュリティベストプラクティスでは推奨されていません。米国国立標準技術研究所(NIST)の最新ガイドラインでは、以下が推奨されています。

  • 長いパスフレーズの使用(短く複雑なパスワードより効果的)
  • 多要素認証(MFA)の導入
  • パスワード管理ツールの活用

ある金融関連会社では、MFAの導入だけで不正アクセスの試みを100%ブロックできるようになりました。投資対効果が非常に高い対策です。

実践:中小企業でも導入しやすいMFA

  • Googleアカウントの二段階認証
  • Microsoft Authenticator
  • Duo Security(小規模チーム向け無料プラン有り)

4. データバックアップと災害復旧計画

「バックアップが大事」というのは常識ですが、実際に適切なバックアップ体制を整えている企業は意外と少ないのが現状です。

3-2-1バックアップルール

データ保護の基本として、私がクライアントに必ず提案するのが「3-2-1ルール」です:

  • 重要データの3つのコピーを保持
  • そのうち2つの異なる種類のメディアに保存
  • 1つは別の場所(オフサイト)に保管

ランサムウェア対策としてのバックアップ

2024年、日本企業へのランサムウェア攻撃は前年比12.7%増加しました(警察庁発表)。ランサムウェアにより業務システムが使えなくなった場合、適切なバックアップがあれば、被害を最小限に抑えることができます。

ある建設会社では、ランサムウェア被害に遭いましたが、定期的なオフラインバックアップを取っていたおかげで、1日で業務を再開できました。バックアップがなければ、数週間の業務停止と身代金支払いの可能性もあった事例です。

災害復旧計画(DRP)の基本

  • リカバリーポイント目標(RPO):どの時点までのデータ復旧が必要か
  • リカバリータイム目標(RTO):どれだけ早く復旧すべきか
  • 責任者と連絡体制:誰が判断し、誰に連絡するか

これらを文書化し、定期的に訓練することで、実際の災害時に慌てることなく対応できます。

5. セキュリティ監視と対応体制

「防御は完璧ではない」という前提で、侵入や情報漏洩が起きた場合の早期発見・対応体制を整えることが重要です。

中小企業でも実施できる基本的な監視

  • ログの定期確認:異常なログイン試行やアクセスパターンの変化
  • エンドポイント保護:ウイルス対策ソフトの導入と定期的な更新
  • 脆弱性管理:OSやアプリケーションの定期的な更新

インシデント対応計画の策定

セキュリティインシデントが発生した際の対応手順を事前に決めておくことで、被害を最小限に抑えることができます。

基本的な対応手順:

  1. 検知と初期評価:何が起きているかを特定
  2. 封じ込め:被害の拡大を防止
  3. 根絶:原因を取り除く
  4. 復旧:通常業務への復帰
  5. レビュー:教訓を得て再発防止

外部専門家との連携

中小企業では、社内にセキュリティの専門家を置くことが難しい場合も多いでしょう。そんな時は、外部の専門家との連携が効果的です。

  • セキュリティ監視サービス(SOC)の利用
  • セキュリティコンサルタントとの定期的な相談
  • インシデント発生時の対応支援契約

DXとAI導入時に特に注意すべきセキュリティポイント

DXやAI導入を進める際には、従来のITシステムとは異なるセキュリティリスクも考慮する必要があります。

クラウドサービス利用時のセキュリティ

DX推進で多くの企業がクラウドサービスを活用していますが、クラウド特有のリスクもあります:

  • 責任共有モデルの理解:クラウドプロバイダーと利用企業、それぞれの責任範囲
  • 認証管理の徹底:強固なパスワードと多要素認証の導入
  • データの暗号化:保存データと通信データの暗号化

AI導入時の特有リスク

AI活用が進む中、新たなセキュリティリスクも出現しています:

  • 学習データのセキュリティ:AIの学習に使用するデータの取扱い
  • AIモデル自体のセキュリティ:敵対的攻撃からの保護
  • AIの判断に対するガバナンス:AIの出力・判断の監視と制御

当社では、ある金融機関のAI導入プロジェクトで、データセキュリティを確保しながら効果的にAIを活用する仕組みを構築しました。具体的には、データを匿名化・加工した上で学習に使用し、AIモデルへの入出力を厳格に管理するシステムを導入。これにより、顧客プライバシーを保護しながらもAIの恩恵を最大限に受けられる体制を整えることができました。

まとめ:明日から始められるセキュリティ対策

今回ご紹介した5つの対策は、専門知識がなくても経営者の判断で着手できるものばかりです。

  1. セキュリティ方針の明確化と全社共有
  2. 従業員教育とセキュリティ文化の構築
  3. アクセス管理と認証の強化
  4. データバックアップと災害復旧計画
  5. セキュリティ監視と対応体制

これらに加えて、DXやAI導入時の特有リスクにも注意を払うことで、貴社の情報資産を守ることができます。

セキュリティ対策は完璧を目指すのではなく、段階的に改善していくことが重要です。まずは自社の現状を把握し、優先度の高いものから着手していきましょう。

私たち有限会社ManPlusでは、AI導入やDX推進を進める企業のセキュリティ対策もサポートしています。特に、AIの活用とセキュリティの両立に悩まれている企業様に対して、リスクを最小化しながらイノベーションを促進する方法をご提案しています。

「AIを活用したいけれど、セキュリティが心配」「DX推進とセキュリティのバランスを取りたい」といったお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のビジネスを次のステージへと安全に導くお手伝いをいたします。

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