「部下にChatGPTを使わせてみたけれど、『嘘ばかりつくし、内容が浅くて使えません』という報告が上がってきた。結局、Google検索と手作業に戻ってしまったよ」
先日、ある企業の経営者様からこのような相談を受けました。この記事を読んでいるあなたも、同じような経験があるのではないでしょうか?
メディアでは「生成AI革命」と騒がれているのに、いざ自社の実務に導入しようとすると、「期待外れ」「これなら自分でやったほうが早い」という壁にぶつかる。その気持ち、痛いほどよくわかります。
しかし、弊社が様々なプロジェクトに関わった経験からすると、「ChatGPTが使えない」のではなく、「ChatGPTへの『指示の出し方』が実務レベルに達していない」ケースが9割です。
この記事では、AIが期待外れに終わる本当の原因と、明日から使える「AIをプロフェッショナルな相棒に変えるプロンプト技術」、さらには単なるチャットツールを超えた「業務システムとしてのAI活用」について解説します。読み終える頃には、あなたのAIに対する認識はガラリと変わり、「もう一度試してみよう」という意欲が湧いているはずです。
1. なぜ、あなたの現場で「ChatGPTは使えない」という結論に至るのか?
まず、多くの現場で起きている「ボタンの掛け違い」について整理しましょう。
AIは「魔法の杖」ではなく「超ハイスペックな新人」
新しいテクノロジーを導入する際、人は無意識に「完璧」を求めがちです。
特にChatGPTのような生成AIに対しては、「質問すれば、文脈をすべて読み取って、完璧な正解を出してくれる魔法の杖」のような期待を持ってしまうことがあります。しかし、現状のLLM(大規模言語モデル)の本質は、確率に基づいて次の言葉を予測するマシンです。
イメージしていただきたいのは、1東大卒で知識は膨大だが、社会人経験ゼロで、あなたの会社の事情を一切知らない新人」です。
そんな新人に、通り一遍の指示だけを出して、完璧な仕事を期待するでしょうか?
- 悪い上司の指示: 「これ、いい感じにまとめておいて」
- 良い上司の指示: 「この資料を、来週の役員会議で使うから、予算の推移に焦点を当てて、A4用紙1枚で箇条書きでまとめて。文体は『です・ます』調で」
前者で提出された資料を見て「使えないな」と嘆くのは、実は上司(使い手)のマネジメント不足です。AIも全く同じです。「ChatGPT 実務 使えない」と感じる最大の要因は、AIに渡している「コンテキスト(背景情報)」と「制約条件」の不足にあります。
「ググる」と「プロンプト」は思考回路が違う
私たちは20年以上、「検索エンジン」に慣れ親しんできました。検索のコツは「単語の羅列」です。 例:「東京 ランチ イタリアン 個室」
しかし、生成AIに対してこのノリで接すると失敗します。 例:「AI導入 メリット 教えて」
これでは、Web上の一般的な記事を要約したような、当たり障りのない回答しか返ってきません。実務で求めるのは「一般論」ではなく、「自社の課題に対する解決策」のはずです。この思考の切り替え(検索脳から対話脳へ)ができていないことが、多くの企業でAI活用が定着しない原因です。
2. 劇的ビフォーアフター! AIを「実務レベル」に引き上げるプロンプト術
では、具体的にどうすればいいのか。弊社が自社の開発業務やコンサルティングの現場で実際に使用しているフレームワークをもとに、「使えない回答」を「そのまま会議に出せる回答」に変えるプロンプト技術をご紹介します。
事例:プロジェクト遅延の「お詫びメール」作成
あるプロジェクトが遅延し、クライアントに報告しなければならないとします。
【Before】 多くの人がやりがちな「使えない」プロンプト
納期が遅れそうなので、クライアントに送るお詫びメールを書いて。
▼ AIの回答(イメージ)
件名:納期遅延のお詫び
〇〇様
平素はお世話になっております。 大変申し訳ございませんが、予定していた納期に遅れが生じる見込みです。 ご迷惑をおかけし申し訳ございません。 何卒よろしくお願い申し上げます。
コメント: これではあまりに内容が薄く、火に油を注ぎかねません。「やっぱりAIは人の心がわからない」と判断される典型例です。
【After】 成果を出す「ManPlus流」プロンプト
私が推奨するのは、「役割」「背景」「制約」「ゴール」を明確にする手法です。
あなたはベテランのプロジェクトマネージャーです。誠実かつ論理的なコミュニケーションで、クライアントの信頼を回復する必要があります。以下の条件に基づき、納期遅延を報告し、リカバリー策を提案するメールの下書きを作成してください。
- 相手:大手製造業のシステム部長(品質に厳しい)
- 遅延理由:最終テスト工程で予期せぬバグが見つかり、修正に時間を要するため。
- 現状:品質を犠牲にして納期を守るより、万全を期したい。
- 提案:納期を3日延長してほしい。その代わり、稼働後の保守サポート期間を1ヶ月無償延長する。
【制約条件】
- 言い訳がましくならないこと。
- 「品質第一」の姿勢を強調すること。
- 相手が社内で説明しやすいよう、経緯を箇条書きで簡潔にまとめること。
▼ AIの回答(イメージ)
▼ AIの回答(イメージ)
件名:【重要】システム納品スケジュールの変更に関するご相談とお詫び
〇〇部長
平素より多大なるご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。 ○○株式会社の××でございます。
本日は、現在進行中のプロジェクトにつきまして、重要なご報告とご相談がございます。
結論から申し上げますと、予定しておりました納品日(〇月〇日)につきまして、3日間の延期をお願いしたく存じます。
貴社の業務に多大なる影響を与えかねないお願いであることは重々承知しておりますが、「品質を最優先する」という観点から、苦渋の決断に至りました。
■ 遅延の理由と経緯
- 最終テスト工程において、高負荷時に動作が不安定になる事象(バグ)を確認いたしました。
- 暫定対処でのリリースも検討いたしましたが、貴社の業務安定性を第一に考え、根本的な修正完了後に納品すべきと判断いたしました。
■ 今後のスケジュールとリカバリー策
- 修正および再テスト完了予定:〇月△日
- 【ご提案】 今回の変更によりご迷惑をおかけする分、稼働後の保守サポート期間を、当初の契約より**「1ヶ月間無償延長」**させていただきます。
〇〇部長の社内調整のご負担をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。 本件、何卒ご承認いただけますよう、伏してお願い申し上げます。
コメント: いかがでしょうか? これなら、「少し手直しすればそのまま送れる」レベルになっているはずです。 重要なのは、AIに「どの立場で」「誰に対して」「何の情報を」「どういうトーンで」書くべきかを、システム開発の要件定義のように詳しく伝えることです。
3. 中小企業こそ「チャット」を卒業し、「システム」にAIを組み込め
ここまで「プロンプト」の重要性をお話ししましたが、実はここからが本題です。
私がManPlusで提唱しているのは、「毎回プロンプトを手打ちする作業自体をなくす」というアプローチです。
都度ChatGPTを開いて、長いプロンプトを打ち込むのは面倒ですし、社員によってスキルの差が出ます。そこで有効なのが、AIを業務システムやアプリの一部として組み込む(API連携)ことです。
事例:AI×OCRによる「領収書処理」の自動化
例えば、経理業務。 「領収書の画像を読み取り、内容をExcelに入力する」という作業があります。従来のOCR(文字認識)ソフトだけでは、レイアウトが崩れたり、手書き文字の誤認識が起きたりして、結局人間が修正する必要がありました。
ここに生成AI(GeminiやGPT-4など)を組み込むと、世界が変わります。
- 画像認識: AIが領収書画像を「見る」。
- 意味理解: 「これは『日付』」「これは『適格請求書発行事業者登録番号』」とAIが文脈を理解して抽出する。
- データ化: 指定したフォーマット(CSVやJSON)に整形して出力する。
当社(有限会社ManPlus)でも「請求書らくらく読取」「領収書らくらく読取」といったソリューションを開発していますが、これは「プロンプト入力」という工程をシステム内部に隠蔽し、ユーザーは「画像をアップロードするだけ」で、AIの高度な推論能力の恩恵を受けられる仕組みです。
「チャット」は入口に過ぎない
多くの企業が「ChatGPT=チャット画面で会話するもの」と思い込んでいます。しかし、AIの本質的な価値は、「情報の非構造データ(文章、画像、音声)」を「構造化データ(データベース、表、コード)」に変換し、業務プロセスを自動化することにあります。
- カスタマーサポート: 過去の膨大な対応履歴(非構造)から、回答案(構造)を自動生成する。
- 日報管理: 音声入力された雑多な報告(非構造)から、重要課題とToDo(構造)を抽出して管理職に通知する。
このように、システムの中にAIをパーツとして組み込むことで、「プロンプトが下手で使えない」という属人化の問題を完全に解決できるのです。
4. AI導入で失敗しないための「E-E-A-T」思考
弊社が多くのお客様を見てきた中で、AI導入に成功する企業には共通点があります。それは、GoogleのSEO評価基準としても知られる「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」を、AI活用にも当てはめている点です。
- Experience(経験): いきなり全社導入せず、まずは特定の部署(例:マーケティング部)で小さく試し、成功体験と「自社専用の良いプロンプト(勝ちパターン)」を蓄積している。
- Expertise(専門性): AIに丸投げするのではなく、最終チェックは必ず人間の専門家(ベテラン社員)が行うフローを確立している。AIはあくまで「下書き担当」と割り切っている。
- Authoritativeness(権威性): 社内のAI活用ガイドラインを経営層主導で策定し、「AIを使うことはサボりではなく、生産性向上のための正当な業務である」とオーソライズしている。
- Trustworthiness(信頼性): セキュリティへの配慮。無料版のChatGPTに機密情報を入力させず、APIを利用したセキュアな環境や、Azure OpenAI Serviceなどの企業向け基盤を利用している。
特に信頼性(セキュリティ)の観点は重要です。たエンタープライズレベルのセキュリティ感覚では、「学習データに利用されない設定」や「個人情報のマスキング処理」は、企業がAIを活用する上での絶対条件です。これらを無視した運用は、いつか重大な事故につながります。
5. まとめ:AIを「文房具」にするか「最強の右腕」にするかはあなた次第
長くなりましたが、今回のポイントをまとめます。
- 「AIが使えない」の原因は、多くの場合「指示(プロンプト)の曖昧さ」にある。
- AIには「役割・背景・制約」をセットで渡すことで、アウトプットの質は劇的に向上する。
- 毎回プロンプトを打つのではなく、業務アプリにAIを組み込む(API連携)ことで、属人化を防ぎ効率化できる。
- セキュリティと運用ルール(E-E-A-T)を守ることが、持続可能なAI活用の鍵。
AIは、使い手である私たちが「どう導くか」で、ただのおもちゃにも、最強の右腕にもなります。 かつてExcelが導入されたとき、「手書きのほうが早い」と言った人がいたように、今は過渡期です。しかし、確実にAIを使いこなす企業とそうでない企業の生産性格差は開いていきます。
「うちの業務なら、具体的にどこにAIを使えばいいの?」 「セキュリティを担保しながら、社内独自のAIツールを作りたい」 「プロンプトエンジニアリングの研修をしてほしい」
もし、そのような疑問やご要望をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たち有限会社ManPlusにご相談ください。 大手コンサルティングファームで培ったシステム構築のノウハウと、最新のAI技術を融合させ、御社の課題に合わせた「地に足のついたAI活用」をご提案させていただきます。
AI導入は、まずは「小さな成功体験」から。 面倒な単純作業はAIに任せ、人間は人間にしかできない「創造的な業務」や「意思決定」に集中できる環境を、一緒に作っていきましょう。
