AI導入を検討されている経営者様の間で、最近こんな疑問を耳にしませんか?
「AIが賢くなったから、もう『プロンプトエンジニアリング』なんて要らないんでしょう?」
確かに、ChatGPTやClaudeといった最新AIの進化は凄まじく、少し曖昧な指示でも驚くほど的確な答えを返すようになりました。
この記事を読みに来られたあなたも、「プロンプト」という言葉の流行に乗り遅れまいと学んできたものの、その前提が覆されつつある現状に戸惑いを感じているかもしれません。
本記事では、この「プロンプトエンジニアリング不要論」を5分で俯瞰し、議論に惑わされず、経営者が今本当に持つべき「実務的なAI活用ノウハウ」を、私の実体験を交えて解説します。
なぜ今「プロンプトエンジニアリング不要論」が語られるのか?
この議論を理解するには、まず「なぜ不要と言われ始めたか」の背景を知る必要があります。
議論の背景:AIの「高性能化」という現実
最大の理由は、シンプルにAIが「空気を読める」ようになったからです。
ほんの1〜2年前まで、AIに指示を出す際は「あなたは〇〇の専門家です(Act as an expert…)」といったお決まりの「呪文」を唱え、できるだけ具体的にステップ・バイ・ステップで指示を与える必要がありました。
しかし、ChatGPTの最新モデルは、非常に高度な文脈理解能力を持っています。
- 以前のAI: 「東京の美味しいラーメン屋を教えて」→ 単なるリストを提示
- 最新のAI: 「今、渋谷にいて、辛いのが苦手な同僚とランチ。どこかいいラーメン屋ない?」→ 「渋谷ですね。それなら辛くない鶏白湯が人気の〇〇はいかがですか?ここから徒歩5分です」
このように、AI側がユーザーの意図を深く推測し、補完してくれるようになったため、「小手先のプロンプト技術はもはや不要ではないか」という声が大きくなってきたのです。
「不要論」を唱える人々の主張
「不要論」を支持する方々の主張は、主に以下の2点に集約されます。
- AIが賢くなれば、人間にスキルは要らない
- AIの進化の最終目標は「人間が何も考えなくても、AIがよしなにやってくれる」世界であり、プロンプトに頭を悩ませる時間こそが無駄である、という考え方です。
- プロンプト作成の手間自体が非効率
- 完璧なプロンプト(指示文)を練り上げる時間に、AIに何度もやり直しさせた方が早い、という意見です。
これは「完璧な自動運転が実現すれば、運転免許も交通ルールも知らなくてよい」と言っているのに近い、と感じます。
確かに運転技術は不要になるかもしれません。しかし、目的地(ゴール)を正しく設定し、安全に運用する(ルールを理解する)能力は、むしろ自動化が進むほど重要になります。
結論:「プロンプトエンジニアリング」は不要にならない。ただし“変質”する。
ここで結論を申し上げます。
プロンプトエンジニアリングは不要になりません。ただし、その在り方は大きく“変質”します。
私たちが学ぶべきは、もはや「AIをだますテクニック」ではなく、「AIというツールを業務プロセスに組み込むための『的確な指示能力』」です。
「不要にならない」と断言する理由
こう断言するには、以下のの明確な理由があります。
1. AIは「超優秀だが、指示待ちの新入社員」である
のコンサルティング経験上、最も難しいプロジェクトは「要件定義」が曖昧なものです。
AIも同じです。AIは「超優秀な新入社員」に例えられます。知識量は膨大で作業も速いですが、「御社の業界の常識」や「今回のタスクの真の目的」は知りません。
- ダメな指示(丸投げ): 「ウチの新しいサービスのプレスリリース、いい感じに作っといて」
- 良い指示(プロンプト): 「以下の[サービス概要]と[ターゲット顧客情報]を基に、[A新聞(経済系)]と[Bメディア(IT系)]に掲載するためのプレスリリースを2パターン作成して。A新聞向けは[経営メリット]を、Bメディア向けは[技術的優位性]を強調すること。」
AIがどれだけ賢くなっても、この「何を・なぜ・どうして欲しいか」という業務の「要件定義」を行うのは、経営者や現場の人間です。この要件定義こそが、新しいプロンプトエンジニアリングの本質です。
2. 「仕組み化」の裏側では、厳密な指示が必須である
弊社は「請求書らくらく読取」といったWindowsアプリケーションを開発しています。
ユーザー様がボタン一つでAIの恩恵を受けられるように見えますが、その裏側(システム内部)では、私たちが設計した非常に厳密で複雑なプロンプト(指示)が自動的に実行されています。

皆様が日々使っている便利なAIサービスの裏側でも、必ずこの「最適化された指示(プロンプト)」が機能しています。「不要論」は、あくまでAIとチャット(対話)する表面的なレベルでの話に過ぎないのです。
これからの「プロンプトエンジニアリング」とは?
つまり、私たちが今後身につけるべきスキルは、以下のように変質していきます。
- (旧)プロンプトエンジニアリング: AIのクセを読み解き、「呪文」のようなテクニックで高精度な回答を引き出す技術。
- (新)プロンプトエンジニアリング: 業務プロセスを深く理解し、AIの能力を最大限に引き出すための「指示(要件定義)」を行い、それを「仕組み化」する能力。
経営者が今、本当に学ぶべき「実務的なAI活用」の姿
では、AI導入を検討する経営者の皆様は、具体的に何を学ぶべきでしょうか。「呪文」を覚えることではないのは明らかです。
事例研究:AIに「何を」「どう」任せるか
弊社では業務で日常的にAIを活用していますが、常に「AIに何をさせたいか」の目的を明確にしています。
例:競合サービスのマーケティングリサーチ
- (旧)ダメな指示: 「A社(競合)のサービスについて教えて」
- → 一般情報が返ってくるだけ。
- (新)的確な指示(プロンプト):「私は[AIコンサル]を提供する企業の経営者です。競合[A社]の公式サイトと直近3ヶ月のプレスリリースを分析し、彼らの[主なターゲット層]、[価格戦略]、[我々(ManPlus)との差別化ポイント]を3点ずつ、簡潔な箇条書きで抽出してください。」
この指示には、「私の立場」「分析対象」「アウトプットの形式」「特に知りたい項目」が全て含まれています。これが、実務における「的確な指示」です。
「プロンプト」を「仕組み」に変える思考法
もし、上記の指示(プロンプト)で素晴らしい結果が得られたら、次に経営者が考えるべきは「この作業を、どうやって仕組み化(自動化)するか?」です。
- 良いプロンプトができた → テンプレートとして保存し、チームで共有する。
- 毎月同じリサーチを行う → RPA(ロボット)や専用ツールにそのプロンプトを組み込み、自動実行させる。
当社の「らくらく読取」も、元をたどれば「請求書のこの項目を、このように読み取って欲しい」という最適なプロンプトを、アプリケーションという「仕組み」に昇華させたものです。
AI活用で失敗する経営者の共通点
逆に、コンサルティングの現場で見る「AI活用で失敗する経営者」の共通点は、この「不要論」の罠にはまっているケースが多いです。
- AIを「魔法の杖」だと思い、丸投げする
- (=的確な指示(プロンプト)の重要性を理解していない)
- 「不要論」を鵜呑みにし、AIの特性や仕組みを学ばない
- (=AIを使いこなすための「指示能力」を軽視している)
AIはあくまで道具です。どんなに高価なシステム(道具)を導入しても、使いこなす側の業務プロセスや「指示能力」が未熟では、宝の持ち腐れになってしまいます。
AIを「業務の片付け」に応用する視点
この「的確な指示能力」は、特に経営者が日々頭を悩ませる「業務の片付け」において絶大な威力を発揮します。
なぜ「片付け」にAIが有効なのか?
経営者にとっての「片付け」とは何でしょうか? それは、物理的なオフィスの整理整頓だけではありません。
- 煩雑なバックオフィス業務(請求処理、経費精算など)
- 社内のサーバーに散らかった過去の資料やデータ
- 非効率な業務フローや、担当者しかわからない属人化したタスク
これらはすべて、経営資源を圧迫する「片付けるべき対象」です。 これらの「片付け」は「分類」「整理」「要約」「実行」というプロセスに分解できます。そして、これらすべてがAIの得意分野なのです。
プロンプトエンジニアリングが活きる「データ整理」
ここで、先ほどの「的確な指示」が活きてきます。
例えば、社内に散らばった「顧客からの問い合わせメール(テキストデータ)」をAIに整理させたい場合。
- (旧)ダメな指示: 「このフォルダのメールを要約して」
- → おそらくAIは何をすべきか分からず、無意味な要約を返すでしょう。
- (新)的確な指示(プロンプト):「あなたは当社のカスタマーサポート責任者です。以下のメール群を読み込み、[緊急度(高/中/低)]、[問い合わせ種別(見積依頼/障害報告/その他)]、[担当部署(営業/技術)]の3つの軸で分類してください。 アウトプット形式: 緊急度「高」かつ「障害報告」のメールから順に、以下のテーブル形式で出力してください。「受信日時 | 差出人 | 概要(30字以内) | 緊急度 | 種別 | 担当部署」」
いかがでしょうか。 この「良い指示」こそが、本記事で再定義した「プロンプトエンジニアリング(=業務指示能力)」です。
AIが賢くなった今、必要なのは「呪文」ではなく、「自社の業務を深く理解し、AIに何をさせたいかを明確に定義する力」なのです。
まとめ:AI時代に経営者が持つべき「指示能力」
「プロンプトエンジニアリングは不要になったのか?」という問いは、本質的ではありません。
5分で俯瞰してきたように、議論のポイントを整理します。
- 「不要論」は、AIが賢くなり、曖昧な指示でも動くようになった表面的な現象を捉えたものに過ぎません。
- 実務(特にシステム開発や業務の仕組み化)において、AIは「超優秀な新入社員」。的確な「指示(プロンプト)」がなければ動きません。
- 経営者が今学ぶべきは、「呪文」ではなく、自社の「片付けたい業務」をAIに実行させるための「業務理解に基づいた的確な指示能力」です。
- そして、その「指示」を使い捨てにせず、チームで共有できる「仕組み」に落とし込むことが、AI活用の成功の鍵です。
AIに「何をさせるか」を決めるのは、いつの時代も人間です。 その「指示」の質こそが、AI時代の企業の競争力を左右します。
経営者の「AI導入の第一歩」をご支援します
「AIを導入したいが、何から手をつければいいか分からない」 「自社の『片付けたい業務』が、AIでどう整理できるか知りたい」
そうお考えの経営者様は、ぜひ一度、有限会社ManPlusにご相談ください。
「プロンプト」というテクニック論を議論する前に、まずは貴社が「AIで何を解決したいか」という最も重要な「要件定義」を整理することがスタートラインです。
豊富なシステムコンサルティング経験、そして現在のAIアプリ開発の知見を活かし、貴社の業務プロセスを「片付ける」ための最適なAI活用の「仕組み」をご提案します。
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