「またシステム改修で追加費用か…」
毎月届く請求書を見て、重いため息をついている経営者は少なくありません。システムの保守費用、ちょっとした機能追加の見積もり、サーバーの更新費用。IT投資が必要なことは理解していても、その対価として本当に適正な競争力を自社は得られているのか。この疑問に対する明確な答えを持てないまま、言われるがままにハンコを押しているのが実情ではないでしょうか。
地方の中小企業において、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれて久しいですが、現場で起きているのは「変革」ではなく、ベンダー主導による「搾取」に近い構造であるケースが散見されます。都市部との情報格差を理由に、本来不要なコストを支払い、使いにくいシステムに縛り付けられているのです。
本稿では、元アクセンチュア・RPAソリューションズ出身として大規模システムの最前線を知り、現在は「有限会社ManPlus」として中小企業の現場支援を行う筆者が、IT業界の構造的な問題を紐解いていきます。これは単なるIT解説記事ではありません。経営者がベンダーと対等に渡り合い、主導権を取り戻すための「武器」となるはずです。
地方企業が陥る「丸投げDX」の罠とベンダーロックインの正体
なぜ、一度導入したシステム会社を切り替えることがこれほど難しいのでしょうか。なぜ、彼らの言い値で契約更新せざるを得ないのでしょうか。その根本原因は、技術力の差ではなく、発注側である企業の「丸投げ」が生み出すベンダーロックインにあります。
システム構造のブラックボックス化という人質
ベンダーロックインとは、特定のベンダーの技術や製品に依存し、他社への乗り換えが困難になる状態を指します。多くの経営者はこれを「技術的に複雑だから他社では触れないのだろう」と善意に解釈しますが、実態は異なります。
多くの場合、システムがブラックボックス化するのは、「何を作るか(要件定義)」の決定権までベンダーに委譲しているからです。「今の業務に合わせていい感じにしてくれ」という発注は、ベンダーにとって白紙委任状に等しい行為です。彼らは自社に都合の良いロジック、独自のフレームワーク、担当者しか理解できない複雑なコードでシステムを構築してしまいます。
結果、仕様書が存在しない、あるいは実態と乖離したシステムが出来上がります。こうなると、他社が参入しようとしても「解析に膨大なコストがかかる」ため断らざるを得ません。自社の業務基盤そのものが人質に取られ、生殺与奪の権をベンダーに握られる構造が完成してしまうのです。
「プロに任せる」は思考停止と同義
厳しい言い方になりますが、発注者が手放してはいけない主導権があります。それは「業務プロセスをどう変えるか」という意思決定です。
DXの本質はIT導入ではなく、データ活用による業務変革にあります。現場の業務フローを一番理解しているのは、ベンダーのSEではなく自社の社員であるはずです。ここを言語化せず、「ITのプロだから」と丸投げすることは、経営放棄に等しいと言わざるを得ません。ベンダーはITのプロではありますが、あなたの会社の業務のプロではないのです。
主導権を取り戻すためには、システムの中身(コード)を理解する必要はありません。しかし、「入力データは何か」「どのような処理を経て」「何が出力されるか」という業務ロジックだけは、自社でドキュメントとして管理しなければなりません。これができて初めて、ベンダーを選定・評価する土俵に上がることができるのです。
その見積もりは適正か?開発費高騰の裏側
「簡単な機能追加なのに、なぜ100万円もかかるのか」。この疑問に対し、明確に反論できる経営者は少ないのが現状です。IT業界特有の商習慣である「人月単価」と「バッファ(予備費)」の仕組みを理解すれば、このカラクリが見えてきます。
「人月単価」という利益相反
日本のSI(システムインテグレーション)業界の多くは、「何を作ったか(成果物)」ではなく「何時間働いたか(工数)」で見積もりを算出します。ここに発注側と受注側の致命的な利益相反が存在します。
発注側は「早く、安く」システムを稼働させたいと考えます。一方、人月商売のベンダーは「時間をかけ、人員を多く投入する」ほど売上が上がります。極論を言えば、優秀なエンジニアが1日で終わらせる仕事よりも、未熟なエンジニアが10日かけて終わらせる方が、ベンダーにとっては「儲かる」案件になり得るのです。
また、要件が曖昧な案件ほど、ベンダーは見積もりに「リスクバッファ」を乗せます。仕様変更や手戻りが発生した際の赤字を防ぐため、実際の作業工数の1.5倍〜2倍の金額を提示するのは、業界では常識的な防衛策です。つまり、発注側の指示が曖昧であればあるほど、無駄な「保険料」を支払わされていることになるのです。
コスト適正化の事例:要件定義の粒度が価格を決める
ここで、実際に弊社(ManPlus)が支援に入り、コストを劇的に適正化した事例をご紹介します。
ある地方製造業のクライアントは、生産管理システムの改修に際し、既存ベンダーから「概算で800万円」という見積もりを提示されていました。内容は「在庫データのリアルタイム連携機能」の実装です。クライアントは「高い気がするが、相場がわからない」と弊社に相談を持ちかけられました。
弊社が調査したところ、ベンダーへの依頼内容は「在庫が見えるようにしたい」という非常に抽象的なものでした。ベンダー側は、あらゆる例外処理や画面UIの全面刷新など、過剰な仕様を盛り込んでリスクヘッジしていたのです。
そこで弊社は以下の介入を行いました。
- 業務フローの整理: 本当に必要なのは「全在庫の把握」ではなく「欠品アラート」のみであることを特定。
- 要件の具体化: 画面改修は行わず、CSV連携とBIツールでの可視化のみに機能を限定。
- ベンダーコントロール: 曖昧さを排除した仕様書(RFP)を作成し、再度見積もりを要求。
結果、再見積もり額は「250万円」まで圧縮されました。機能は必要十分であり、浮いた予算は現場のタブレット端末導入に充てられました。これは魔法ではありません。要件定義の解像度を上げることで、ベンダーが乗せていた「不安代(リスクバッファ)」を削ぎ落とした結果なのです。
ManPlusが提唱する「身の丈に合ったDX」とは
大手ファームにおける、数億〜数十億円規模の巨大プロジェクト。そこでは「堅牢性」「完全性」が最優先され、重厚長大なドキュメントと厳格なプロセスが正義とされていました。
しかし、この手法を地方の中小企業に持ち込むことは間違いです。予算もリソースも限られる中小企業に必要なのは、重厚なシステムではなく、「スピード」と「柔軟性」です。
大手コンサルの「完璧」より、現場の「即戦力」
ManPlusが提唱するのは、「スクラッチ開発(ゼロから作る)を極力避ける」というアプローチです。
今の時代、優秀なSaaS(クラウドサービス)やAIツールが無数に存在します。これらをAPIで繋ぎ合わせれば、数千万円かけて開発していた機能が、月額数万円のサブスクリプションの組み合わせで実現できることも多いのです。
例えば、営業日報の分析システムを作る際、ゼロからデータベースを構築する必要はありません。kintoneで入力フォームを作り、蓄積されたデータをChatGPTのAPIに投げて要約・分析させ、Slackに通知する。これなら開発期間は数日、コストは従来の10分の1以下で済みます。
地方企業こそAIアプリ開発で「小回り」を利かせる
特に、生成AIを活用した「マイクロアプリ開発」は、中小企業の強力な武器になります。
- ベテラン職人の見積もりノウハウを学習させた自動見積もりツール
- 膨大な過去図面から類似案件を検索する社内検索エンジン
- クレーム対応メールの自動ドラフト作成
これらは、巨大なパッケージソフトを導入しても実現できない、各社の「現場の痒い所」に手が届くソリューションです。ManPlusは、大手の手法を知り尽くしているからこそ、あえてそれを捨て、中小企業の身の丈に合った、しかし最先端の技術を組み合わせた「賢いパッチワーク」を推奨しています。
まとめ:第三者の視点を入れる勇気
本稿のポイントを再確認します。
- 丸投げは搾取の始まり: システムの中身は知らずとも、業務ロジックの主導権は渡してはいけません。
- 見積もりの正当性を疑う: 人月単価の商習慣に飲み込まれず、要件を明確にすることでリスクバッファを排除しましょう。
- 身の丈に合ったDX: 重厚長大な開発は不要です。SaaSやAIを組み合わせたスピード重視の活用こそが競争力になります。
現在付き合いのあるベンダーを、今すぐ切り捨てる必要はありません。しかし、彼らの提案を鵜呑みにせず、「本当にこれが最適解か?」「もっとコストを抑える方法はないか?」という視点を持つことは、経営者の責務です。
もし、今の見積もりに違和感があるなら、あるいは「何から手をつければいいかわからない」という状態なら、一度セカンドオピニオンとして外部の目を入れてみることを強くお勧めします。
ManPlusは、ベンダーと貴社の間に立ち、技術的な翻訳を行うことで、対等なパートナーシップの構築を支援します。また、AIを活用した「安く、速い」アプリ開発の実績も多数保有しています。
「言いなり」のDXから脱却し、自社がコントロールする「攻め」のIT活用へ。現状のベンダー関係に疑問があるならば、まずはManPlusへ相談してみてください。その一歩が、貴社の利益構造を変える転換点になるはずです。
